序文

これからここに有象無象な文章が書かれていく予定である。予定と書くことで怠惰の言い訳を始めからしておくことにしよう。例えばサパティスタ民族解放軍のマルコス副司令官は「ジャングルの中で何もしないでいると頭が暴発してしまう。」という理由で、幾つもの名文を書いてらっしゃるが、コンクリートジャングルの中で何もしないでいても脳みそが耳から垂れ流れるくらいのことで、むしろ頭が軽くなって心地よいくらいであるから、致し方ない。
と言うわけで、名文は生まれず雑文が生まれることになる。
雑文故、雑兵と名付けた。
1回目でもあるから、ここで雑兵についてあれこれ書いてみたい。
雑兵とは何か。ならず者部隊が秘密基地を攻撃する、あるジャンルの映画(ナヴァロンの要塞が最高峰!)において、基地を警備していて、後ろから主人公にノドを切られたり、首をしめられて死んでしまう兵隊であったり、大河ドラマの戦国時代ものの中で、チープな鎧、三角形の帽子に身をつつめて、一直線に走り回る人たちのことを言うのだろう。つまり配役が兵士Bであったり、足軽Aだったりする名前のない人たち である。映画の世界ならそれでもいい。
現実の世界においては足軽Aなどではなく、ちゃんと名前もあれば、親もいるだろう、誰かの父親かもしれない。友もいる人もあれば、いない人もいて、恋人のいる男もいれば、いない女もいる。糖分が好きかもしれない。いちご味のかき氷をスーパー銭湯で一っ風呂あびた後に食べるのを無上の喜びにしているのかもしれない。
つまり誰にも人生がある。その人生がだれ一人同じでないというだけのことである。映画の世界ならそれでもいい。
でも現実の世界で、女子供、老人、死者数百名、虐げられた人々などといった書き方で、その個人個人の人生といったものが消されてしまう表記を見た時、何か釈然としないものを覚えるのである。その表記の正義に嘘を感じる。
また映画の話に戻ろう。
映画の中で、役割的には雑兵でありながら、一瞬ではあるが主役を喰ってしまう雑兵が多数登場する、あるジャンルの映画がある。
それは「仁義なき戦い」を最高峰とする東映実録やくざ路線である。大部屋俳優のギラギラした野心が、あの映画にしみ込ませた功績は、のちにピラニア軍団として1本の主演映画が出来上がったことでも察せられよう。
ピラニア軍団と言われても分からない人がほとんどであるが、その代表者、川谷拓三の名前をあげれば皆さん「ああ、なるほど。」と納得してくれることと思う。
拓ボンこと川谷拓三の体を張った演技の数々については、いつかこの雑兵のコーナーで紹介する予定である。(予定である、とは便利な言い方だ。予定はあくまで予定なのだから。)
と言うわけで、ここに登場する雑文の数々は川谷拓三の気合いを持った文章(どういう文章だ。)であることを目的にしたいものである。決してハリウッド映画のドイツ兵や南米麻薬ギャングや中近東過激派のようにあってはならない。

2004 5月19日更新
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