DO YOU BELIEVE ROCK'N'ROLL RADIO?

実家のある大垣には、たくさんのブラジル人がいて、そんな彼等の要求に答えるために、
ブラジルの食材とレストランと生活用品を合わせた店などもあり、そこではポルトガル語のレンタルビデオとブラジル音楽のCDコーナーも併設されている。
たまにそこでCDを買う。どんな内容か皆目わからないので、ジャケ買いをするか、
丁度、店内で流れている音楽がよければそれを買う。
一番確実なのは、レジのおばちゃんやお姉さんにお勧めを選んでもらうことだ。
手に入れたCDはライブ盤が多く、大合唱をする観客の声が印象的だ。
その音楽自体も好きな世界だったりする。
「コレハ、ブラジルデ、イチバン、ネ。」などコメントも貰ったりする、その音楽はCDショップのワールドコーナーで見かけることはない。

話はエジプトに飛ぶ。エジプトにはいわゆるCDショップというものはなく、またそれ以前にCD自体が普及しておらず、カセットテープが主流となる。そしてそれらのカセットは、食材や生活雑貨などを全部網羅している店の店頭で売られている。カセットのジャケについて説明するなら、「武ロンセ」のジャケットにアラビア文字が書かれたものを想像されたし。男も女もテカテカの濃さが売り物だ。打ち込みによるアラビアメロディーにのった歌声は街中に響きわたる。バスの中で、夜、ナイル川を下る船の上で、遊園地で、人の集まる場所ではどこでも、そして人々は音楽に合わせ踊り続ける。この国においては、老若男女が同じ歌を共有する。昔の日本の歌謡曲がそうであったように。
エジプト人の生活に密着したこれらの音楽は、CDショップのワールドコーナーで見かけることはない。

この二つの例を見た時、他の国においても、その国で一般的に流れている音楽が、
CDショップのワールドコーナーにはおかれてないのではないかと思ったりする。
それに付随して、「本物とは何か?」という疑問も沸き上がる。
何故なら、ワールドコーナーにあるCDに「アート」であるとか、「本物」「良質」であるとかの冠を見るからだ。
これらの音楽をいろいろ買い求めてみたけれど、どれも何か一つ足りない。
よそ行きの感じがする。整い過ぎてつまらないのだ。

例えば、本物のエジプト音楽というと、詳しくは分からないけれど、アコースティック楽器による正統的演奏のイメージが浮かぶ。そして安易に量産される打ち込みメロディーによる音楽は非難の対象となる。
時に「消費」として、時に「アメリカナイズの象徴」として。
どちらが絶対であるとかは思わない。
ただ、聞きやすさ、入り込みやすさの観点からは、あきらかに店頭で売られているカセットテープのほうであるし、広く大衆に受け入れられている事実は何度も目の当たりにした。故に「本物とは何か?」である。

その現象を消費社会による堕落だと片づけ、昔は良かったとする論もあるかもしれない。
しかし、現実は一つだ。
人にはそれぞれ事情があり、皆生きているのだ。
その図式とはロックとクラッシックの間で長く語られてきたものだ。
クソったれ!と人さし指を立てなければ生きられない人がいる。
高い音楽性と卓越した演奏技術が本物というのだろうか?
結局は人のなすことである以上、その演奏者の人間的魅力、それは一つに限定される
ものではないにしろ、が全てであると思う。
完璧を人が愛するわけではない。
いくら演奏技術が優れていようと、その人がつまらなければそれだけのことだ。
卓越した演奏技術?だから何?
それがアートです。分からないお前が悪いだって?
野球のバットでぶん殴ってやる!!!!!!!!!
ラモーンズを見習え。それは歴史が証明している。

カンテフラメンコはマイナー故、日本ではインテリジェントに語られがちだけど、実際はどうだ。自分の長くはないが、密度の濃いヒターノたちとの関わりから推し量られるもの。それはむき出しの人間性だ。人間臭さだ。
よく行く飲み屋での出来事。
程よく出来上がった作業着を着たおっさんがたまたま流れていた「武ロンセ」に合わせて、でたらめに歌い、叫んだ。そして居合わせた皆が笑った。
フラメンコについて眉間にしわを寄せて語るよりも、こんな風に受け入れられる方が好きだ。そして、このおっさんとミゲルはそんなに違わない。

実際に行ってもないブラジルについて語るのはナンセンスだ。
ただドキュメンタリー映画で見た、あるシーンについて触れてみたい。
その映画は「エンド・オブ・センチュリー」で、これはラモーンズの映画だ。
ラモーンズはブラジルのストリートチルドレン、店主により雇われたガンマンに射殺される現実を持つ、に絶大な人気を誇り、3万人入るサッカー場での熱狂的なライブが映し出された。ストリートチルドレンもブラジル人である事実を前にした時、そしてブラジルの中でもヘビーな生活を強いられている事実を前にした時、数多あるブラジル音楽はどこに行けばいいのだろう。

本物とは何か?
論にもならないことを書いてきたけれど、
結局最後は、各々が何を選択するかが残されるのだと思う。
あなたは何を信じるか?
私はラモーンズを信じる。
1、2、3、4!(ワン、ツ、スリ、フォッ!)

更新日2005年9月30日更新
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