蟹江敬三

「十九歳の地図」がレンタルビデオ屋にあったので、確か板橋さんの「グットバイ」がサントラだったなと思い、借りてみました。
尾崎豊っぽいタイトルから寒い青春映画なんだろうと想像していたのですが、そんな予想を大きく裏切り、ただひたすらに暗い、見ている間にどんどんと生きていくのがいやになるという精神衛生上あまりいい映画ではありませんでした。
住みこみで新聞配達をする孤独な青年が主人公で、いたずら電話で鬱憤をまぎらすといったところでだいたい内容の察しがつくのではないでしょうか?
そして一番知名度のある俳優が蟹江敬三。
まだ若い蟹江敬三が今と変わることなく、くどさを撒き散らせて画面で大暴れしています。他の出演者も生活に疲れた顔ばかりで、好感を持てる人は一人もでてきません。
しかし蟹江敬三が出てくるだけで何か左翼くさくなるのは、やはり苗字の蟹の部分が何か『蟹工船』を想起させるからだという気がしませんか?

小さい頃、蟹江敬三を受け入れることができなかった。
最近はわりとありになりつつある。
常々、人は蟹江敬三を受け入れることができたとき大人になると思っているのですが、この考えには、きっと皆さんも賛同してくれることでしょう。
それはまた、蟹江敬三を左とん平に変えても成り立つ図式でありますまいか。
以下、余談ながら、左とん平の名字が「左」と思いっきり思想を表明しておりながら、同じく「左」という名字の左幸子が、ご多分にもれず左翼臭でいっぱいなのに対し、微塵も感じさせないのは、とん平さんの人柄によるのものか、あるいは「とん平」という博多区に存在してそうなラーメン屋の屋号のような名によるものなのか、一考に値する訳は勿論ない。

それでは本題にはいります。
板橋さんの音楽のことです。
若かりし頃の板橋さんが、すごく研ぎ澄まされて、触れると手が切れそうで、なにか少しでもバランスがくずれると壊れてしまう危うさをはらんだ、緊張感にあふれた演奏で、今とは違う魅力があります。
今まで聞いた「グットバイ」の中で一番でした。

というわけで、暗い映画ですが、悪い映画ではないし、板橋さんの音楽がいいので、レンタル屋で見かけたら借りてみてはどうでしょうか?
でも幸せな時には見ないほうがいいでしょう。
僕はバランスをとるため「ミヨちゃんのためなら全員集合!」を続けざまにみました。

「人は蟹江敬三を受け入れた時、大人になる。違うか?」

更新日2006年3月7日更新
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