フラメンコの仙人たち
収録レポート
前哨戦その1 宇宙堂

福岡で旅の前に髪を切った。ばっさりと。思い切ってを通り越してモヒカンにする。
「わし、ヒターノの奴らになめられたらいけん思うちょりますけん。」
とボンクラの戯言も理由であるのだが、合理的な理由もある。
その理由とは整髪剤とかブラシといったものを荷物から外すことにある。
私にとって荷物は少なければ少ない程いいのである。
また寝グセがひどく、目覚めるといつもパンクスになってしまい、それは直すのも面倒なのだが、モヒカンにすることでその煩わしさからも開放される。
それなら禿げでも坊主でもいいわけだが、まあ人が必死に禿げを隠す時勢、好き好んでツルッパゲにする必要もあるまい。
私の場合、スキンヘッドにすると10人中8人はその筋の人と勘違いする危険性もある。
ともかく髪型はモヒカンである。
切った場所は、宇宙堂。
宇宙堂の特徴はスタッフの苗字が珍しく、一回で読める人はまずいないということである。私はそこに親近感を覚える。
私もその部分においては宇宙堂のスタッフになれる資格があるだろう。
山田だとか木下といった小学一年生でも読み書きできる苗字ではお話にならないのである。
薬院にある宇宙堂につき呼び鈴を押すと宇宙堂のマスコット犬ウミチンが歓迎してくれた。一ヶ月ぶりの再会である。
この歓迎ぶりを見た時、私の家の飼い犬がひと月ぶりに帰宅した際、私に背を向け一心不乱に水を飲みつづけ、一息ついて顔をあげると「誰だ?てめぇ?」といった顔をしたのと比較してしまうのであった。
確かに、例えば私が「動物を虐待する奴は許さない。」などとグリンピースのようなことをのたまおうものなら奴はきっと
「てめぇが毎日俺に対して行ってる仕打ちを前によく白々しくそんなことが言えるなぁーこの偽善者!」と言うであろうから、これはいたしかたないことなのかもしれない。
そういうわけでカットも始まり、終わると床にはついさっきまで私の一部であった髪の毛が203高地の日本兵のように累々と屍をさらしているのであった。
そして鏡の前にはウルトラマンがいた。
(追記)
帰国してみると世の中はワールドカップ一色で、ベッカム人気により実は今、モヒカンが一番、最先端の髪型と言えなくないことに複雑な心境である。
私はそんな流行と無関係なところでモヒカンにしたのだから。
私がベッカムを知ったのはテレビでイングランド戦を見てからである。
とはいえ、普通田舎だと白い目で見られるところがむしろ好評なのだからベッカム様々と言わねばならないだろう。

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更新日2006年6月8日更新
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