ワレヒトリ、グアムニ死セントス

グアム島に滞在した時の印象より詠める

森田上等兵殿

自分は上等兵殿の命によりここグアム島を死守せんと堪えがたきを堪え、偲び難きを偲び、岩を枕に生きてまいりました。
上等兵殿は撤退するにあたり自分に言いました。
「これは負けたのではない、一端各島に散らばった戦力を結集し、折りを見て米軍に総攻撃をかけるのだと。貴様は島に残り、来るべき総攻撃に備えよ。その日が近づいた時、改めて連絡する。」
それからどれくらいの時が過ぎたのでしょうか。
連絡はございませんでした。
そして自分ももう疲れてまいりました。
そこで意を決し、憎き米軍と一戦を交え潔く散ろうと
ある日、その日は天気晴朗なれど浪の高い日でした、ふもとに下りていったのです。
皇国の興廃、この一戦にあり自分は一層奮励努力する覚悟でした。
毎日手入れの怠ることのなかった38式銃を力強く握り、
「大日本帝国バンザーイ!!」自分は飛び込みました。
すると眼前に広がるものは堅牢な米軍の基地ではなく、
懐かしい日本人の姿、姿でした。
日本語の看板がいたるところに上がり、反日感情剥き出しであった原住民達も
日本語を話しているではありませんか!

上等兵殿、自分には分かりました。
日本は戦争に勝ったのでございますね。
あの憎き白人列強、鬼畜米英を蹴散らし、
アジアに大東亜共栄圏を築くことに成功したのですね。
良かった。本当に良かった。
死んでいった戦友達も報われることでしょう。
あの幸せそうな日本人の顔を見て下さい。
たくさんの買い物袋をかかげ幸せそうに歩いております。
ぞろぞろ、ぞろぞろ、徒党を組んで嬉しそうに。
自分は役目が終わったと判断しました。
上等兵殿、自分は勝手ながらここに任務を終了することを報告します。
急ぎ帰国し故郷に戻る所存でございます。
自分の勝手をお許し下さい。

横井二等兵

更新日2006年6月22日更新
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